大阪地方裁判所 昭和58年(ワ)6404号 判決
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【判旨】
三1 <証拠>を総合すると、以下の事実が認められ、これを覆すに足りる証拠はない。
(一) レボン商会は、昭和四〇年に洋品雑貨の卸売を営業目的として設立された有限会社であり、設立以来順調に業績を伸してきたが、昭和四八年来のいわゆるオイルショックの影響で売上げ不振に陥つた。そこで、取扱品目を拡大して衣類も扱い、社員も増し、福岡市内に営業所を開設したりして売上げ増加を図つたが、昭和五五年、五六年の冷夏、昭和五六年の暖冬の影響で夏物、冬物の衣類を中心とする商品の売上げが低下し、多数の商品が売れ残つた。そこで、損失を最少限に押えるために在庫商品をダンピングしたので、前記のような欠損を生ずるに至り、昭和五五年度の売上額は約金四億七六〇〇万円、昭和五六年度のそれは約金五億四三〇〇万円、昭和五七年度のそれは約金五億〇二〇〇万円であるが、借入金の金利負担等で欠損が続いた。
(二)(1) ところで、レボン商会は、以前から手袋を扱つていたが、昭和五七年頃、従来の業者から同商会の要求するオリジナルな商品は製造できないと断わられ困つていたところ、同年一月頃、訴外リングバード渡辺を通じて原告を知るようになり、同年四月二三日、同商会の仕入担当者河津を通じて原告と商談を進め、原告との間で手袋の基本的な売買契約が成立し、同年五月一〇日、数量及び価格並びに支払条件(二〇日締め、翌月一一日一二〇日先の期日の手形で支払う。)が決められた(正式発注は同月一七、一八日)。
(2) そこで、右契約に基づき、原告からレボン商会に、同年八月二一日に四八万〇五〇〇円相当の、同年一一月一〇日から同月三〇日の間に一三九万一一〇〇円相当の、同年一二月二日から同月一三日までの間に一〇五万七三九〇円相当の手袋が納品され売買された。
なお、同商会は、冬物商品につき(手袋も含む)、通常の年度と同様に、春に販売計画を建てて業者との間で売買契約を締結して発注し、八、九月に納品を受けて一〇月から一二月にかけて販売することとし、原告においても、発注された数量の手袋を出来上つた八、九月の段階で同商会に納品することとしていたが、当年度はある程度暖冬と予想されたことから、同商会は納期を二か月程遅らせたので、前記のとおり一一月、一二月にかけて大半が納品されたものである。
(3) レボン商会は、前記売買代金の支払いのために、①昭和五七年一二月一三日、額面金額七一万二三〇〇円、支払期日昭和五八年四月二六日の、②同年一月一一日、額面金額二一〇万円、支払期日同年六月二六日の、③同年二月一四日、額面金額一一万六六九〇円、支払期日同年六月二六日の各約束手形を原告に振出し交付した。
(4) ところが、レボン商会は、前記のとおり昭和五七年の暖冬の影響により冬物商品の売上げが低下して経営が極度に苦しくなり、遂に昭和五八年三月二五日、手形の不渡りを出すに至り、原告の所持する前記約束手形を期日に決済することができなかつた。
2 前記認定事実によれば、要するに、レボン商会は、昭和五五年頃から気候の影響による売上不振で欠損を生じ経営が苦しくなつたが、被告はこの状況を打開するためにそれなりに努力していたものであること及びレボン商会が原告に本件売買代金を支払うことができなくなつた原因は、昭和五七年春頃決定した同年冬物商品の販売計画が、同年の暖冬の影響で大幅に狂つたことによるものであることが認められる。
ところで、前記認定のとおりレボン商会が商品を仕入れる時期と卸売りする時期との間にかなりの日数があり、冬物商品の販売計画は春に建てられるのであるから、春において同年の冬の気候の状況はある程度の予想はつけられるとしても、これを正確に予想し消費者の購買力に与える影響を正確に把握することは困難であるというべきであり、従つて、販売計画の立案において気候条件等販売計画を建てるにおいて検討すべき条件の検討をしないでなしたものである等の特別な事情がない限り、気候の影響により当初の販売計画が狂つたことについての責任を被告に帰することができず、被告の責に帰すべき特別な事情を認めるに足りる証拠はない。
四ところで、原告は、昭和五八年一二月頃には同年の冬物の商品の販売が暖冬の影響で著しく不振であつたことが明らかとなり、金融機関からの借入もすでに限度を越えていたから、被告は、商品仕入時にレボン商会が代金を決済することができないことを知つていた。そうでなくとも容易に推測できたと主張している。
しかしながら、<証拠>によれば、昭和五七年一二月頃の手袋の売上げは不振ではなく、昭和五八年二、三月頃になつて不振となつたものであること、原告との取引当時銀行からの借入がかなりあつたものの、仕入代金については、それまでの販売代金で決済し、不足分は銀行からの借入でまかなつていた(銀行から借入ができなくなつたのは昭和五八年度になつてからである。)ものであり、このようにして昭和五七年度は、前記認定のとおり昭和五六年度よりはやや低額であるが約五億〇二〇〇万円相当の商品を販売し営業は例年どおりであつたことが認められ、従つて、被告において、本件取引当時レボン商会が代金を決済できなかつたことを容易に推測できたとはいいがたく、まして、被告がこれを知つていたといえず、また、これを認めるに足りる証拠はない。
そして、他に原告の主張を認めるに足りる証拠はない。
(本間榮一)